そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「アトラク=ナクア」

傷ついている者がいた。
 それは人の姿をとりながら、しかし人外の者。
 その者の名は初音、幾百年の時を生きる女郎蜘蛛。
 初音は、宿敵「銀(しろがね)」との戦いで傷つき、傷を癒す為にこの場所へ逃れてきた。
 その場所は−懐かしい土地にある…学校だった。
少女がいた
少女は古い体育館裏の倉庫で、男達に犯されていた。
少女は犯されながらも、男達を憎んでいたその時。
その憎しみに答えるように声がしたかと思うと、一陣の風が吹き・・・
そして、初音と少女は出会った――
というわけで今回は名作の誉れ高い、アリスソフトの代表作「アトラクナクア」
これは、古典ビジュアルノベルの傑作の一つです
非常に18禁としての物語のバランスが取れた作品で、淫靡でダーク
そして退廃的な雰囲気が絶妙に混ざり合って、凄く良い味を出してます
とにかく「主人公とヒロインが出会い、恋をしました」なんて普通の展開とは完全に無縁の世界
蜘蛛の化け物である初音と、初音に救われた少女・カナコの織りなす、切なくも甘美で退廃的な交流の物語です
付かず離れずの微妙な関係、それだけに特別な関係
そんな2人の哀愁を帯びた姿が上手く表現されてました
冷酷非道・傲慢不遜・妖艶優美、そして邪悪でありながらも時折人間味を覗かせるという、初音のキャラクターも良かったです
非常に気に入ったシーンとして
物語後半で傷つき本来の蜘蛛の姿をさらけ出した初音が、少女におぞましい蜘蛛の姿を見られまいと必死に人間の姿をとろうとする という場面があります
この場面はおぞましい蜘蛛の姿を見ても自分の慕う初音には違いないのだからと、全く動揺しないカナコの態度と相まって非常に心を打たれました
本作は、そんな耽美で退廃的で美しくも切ない物語でしたね