そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「forest」

これは、影よこたわる国、罪都・新宿につなぎとめられた、五人の仲間の織りなす、絶望と闘いのタピストリ
ビルの谷間に、路地裏に、地下道に…街並に焦点を重ね「森」は出現する
それは一切の常識が通用しない、禁断の領域
誰にも理解されず、救われることもなく、孤独で絶望的な闘いを彼らは続ける
「森」が否応なく課す「リドル」に、獲得する超能力「ギフト」で対抗する
失敗は、彼らが何より恐れる「新宿からの追放」を意味していた――
というわけで、星空めてお ひいてはライアーソフトの最高傑作と評される事も少なくない本作 Forest
独創的な作品というのは数あれど、この作品は、その中でも個性とアクの強さではトップクラスに位置する
何とも説明しづらい不思議な作品だ
「神話の時代からそうさ
皮肉と洒落と、語呂合わせと…言葉遊びで、世界は出来てる 」
作中のこの台詞こそが物語の全てかもしれない
物語について考え、読み解こうとしない人間には向かない作品であるにも関わらず
物語を論理立てて完璧に読み解こうとする人間には、もっと向かないという支離滅裂でアンバランスな作品でもある
ライアー作品らしい世界観と雰囲気に酔ってナンボという作風の究極系がきっとこれだ
そんな独創的な本作ではあるが、名作と呼ばれる作品が良く持ち合わせているテーマ性やメッセージ性と言った物とは、あまり縁がなく
むしろエンターテイメントに徹している作品という認識の方がしっくり来る
言うなれば、大人の為のお伽話
「人の作る物語は、ただの妄想ではなく、そこには生命が宿る」
と作中で語られる通り
本作は、劇中劇
つまりは、物語の中の物語というのを強く意識させられる
それと、アリスやマザーグース、、指輪物語ナルニア等の児童文学をモチーフにしている点も非常にユニークで、英国文学と新宿という空間を融合させた不思議な世界を作り上げたライターのセンスには、感嘆するしかなかった
それから、演出も見事
キャラクターが突然歌いだすというミュージカル的なアプローチは、斬新で素晴らしいとしか言いようがない
これを演じきる声優さん達の演技力も賞賛ものですね
また、音楽やCGのクオリティも高く作品全体としての完成度は、かなりの物である
そんなこんなで奥が深く難解なんだけど、肌にさえ合えばフィーリングで付いていくだけでも楽しめてしまう一風変わった名作のお話でした