そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「ゆのはな」

大学が冬休みに入り、あても無くバイク旅行に出掛けた主人公『草津拓也』は、片田舎にある『ゆのはな町』を訪れた矢先に交通事故を起し、道端にひっそりと建っていた古びた祠にバイクごと突っ込み、意識を失ってしまう
再び目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは、 仰向けに倒れた自分を宙に浮かんだまま覗き込む、奇妙な格好をした少女の姿だった
少女は、自らを土地の守り神である『ゆのは』だと名乗る
土地神としての力を使って、瀕死の重傷を負っていた拓也を治療したことを語ったゆのはは、笑顔のまま賽銭箱の形をした貯金箱を拓也に突き出してくるのであった…
――それは、ある冬の暖かい物語
というわけで ゆのはな
これは、大人の為の心温まる冬のお伽話
正に癒しのシナリオとでも言うような、心地よさと優しさ、そして温かさに満ち溢れた物語の前では、御都合主義なんて言葉は、野暮以外の何者でもないだろう
本作には派手な展開や意表を突くような仕掛けは存在しない
全体的にまったりとした雰囲気の作品と言える
だが、その雰囲気の良さが秀逸だ
温かい雰囲気の作品は少なくないが、本作は、その中でも雰囲気作りに成功した一作と言える
主人公マンセー系の作品によくある、主人公や、その周りに限定された温かさではなく
この作品は皆が皆に優しく温かい
仮に自分が物語の世界に迷いこんだとしても、温かく迎えてくれるに違いないと信じ込ませてくれるだけの雰囲気の良さは本当に魅力的だ。
田舎町らしい素朴さ溢れるゆのはな町という舞台
好青年という表現がぴったりな爽やかで好感の持てる主人公や守銭奴で小生意気だけど、どこか憎めない ゆのは を始め、活き活きとした個性溢れる登場人物達
藤原久々さんの柔らかい絵柄や作品にマッチしたBGM、原田ひとみさんが歌う温かさを感じさせてくれる主題歌
それら全てが、本作の雰囲気の良さを引き立てる上で良い方向に作用している
ちなみに同メーカーの作品である「遥かに仰ぎ麗しの」に登場する理事長がお気に入りの方はメインヒロインである ゆのは を気に入る確率が高いのではないだろうか
そんなこんなで、本作は刺激を求める人にはオススメ出来ない
だが、ちょっと疲れた時や、温かくて優しい空気に浸りたい気分の時には是非オススメな一作と言えるだろう
それと最後になるが、イタリア戦艦、それも ヴィットリオ ヴェネトが好きな方にも本作をオススメしておきたい