そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

コラム「アンチヒーローのすゝめ」

「そんなことを、お前が言う権利はない
俺は、俺のやりたいことをするだけだ」
先日、レビューを書いたMARIONETTEの主人公の口癖だ
俺は、こういう行動原理に従い、望むがままを行うアンチヒーローと呼ばれる存在が大好きでしょうがない
それは、彼らに人間臭さを感じるからに他ならない
人を助けたい、人に感謝されたい というのが正の感情だとするなら
人を屈服させたい、欲望を吐き出したい というのが負の感情だろう
人によって比率の違いこそあれど、人間誰しも正負両方の感情を持っているものである
糸使いの作中において
「君は、善人なのか悪人なのか良くわからん」と言われた主人公が
「じゃあ、逆に聞くが、この世に完全な悪人や善人なんているのかよ」
と返す場面があるが、これは真理だと思う
ところが、物語の主人公というのは、どうにも正の部分ばかりしか見えてこない者が多かったりする
英雄譚ならばそれでも良いが
俗に厨二や邪気眼と評される作品でさえこの傾向は強く、特殊能力を手に入れても、それを己の好きに使う者など僅かで、そういう意味では、ドラえもんのび太くんの方がよほどアンチヒーロー的である
よく、厨二病の妄想を具現化したようだ と評される類の物語があるが、こういう負の妄想を描けてないようでは正直生温いと言う他ない
ならば、陵辱ゲーの主人公の様に下半身の赴くままに行動すればいいのかというとそうではなく
あくまでアンチヒーローは、ヒーローでなくはならない
欲望に溺れ弱者をいびるような小物は論外
強者をねじ伏せる事に快感を覚え、人の命以上に自らの命を粗末に扱うようなダーティーでストイックな姿こそアンチヒーロー
ふと気づいたが
・存在としては、間違いなく悪で自らの望むがままを行うのだけど、結果として弱きを助けたり巨悪を倒したりする
・金、女は好きだがそれ以上に闘争に快楽を覚える。
これは正に俺が昔嵌っていたハードボイルド小説に良くいる類の主人公だ
なる程、俺の嗜好の原点はそこだったわけか
というわけで最後は、昔読んだハードボイルド小説の印象的な一言で締めさせて頂く
「現世の快楽を極めつくし、もうこの世に生き甲斐を見出せなくなった時が来たら、後はただ冷ややかに人生の杯を唇から離し、心臓に一発撃ち込んで、生まれてきた虚無の中に帰っていくだけだ
快楽とは、生命の充実感でなくして何であろうか」
嗚呼、アンチヒーローよ永遠なれ