そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「シンシア〜Sincerely to You〜」

「領空侵犯機を撃墜せよ」
空軍の戦闘機パイロットである主人公・坂月 純夜に下された命令
それ自体は軍人である彼にとってはありふれたもの
ただ一つ、撃墜すべきその対象が民間の旅客機であると言うことを除いて…
抗議も虚しく、撤回されない命令に従うまま民間機を撃墜する純夜
しかし、その後の彼を待っていたのは民間機撃墜の責任を純夜にかぶせようとする軍部と、容赦無いマスコミの追及だった
軍を追われ、抜け殻のような生活を送る純夜
数年後、そんな彼の元に自らの撃墜した旅客機の生存者が見つかったというニュースが入る
だが、その生存者である少女・シンシアは事故のショックで記憶喪失になり、その後、狼に養育されていたため人間としての振る舞いを忘れ、所謂狼少女になってしまっていた
そして純夜は自らの行為を贖う為、精神科医と身分を偽りシンシアのリハビリを行うことを決意するのだった――
というわけで シンシア〜Sincerely to You〜
正直、色々と惜しい部分もあったが、光る部分も十分にあった作品だと言える
描かれるのは贖罪と心の交流
個人的嗜好として重い設定の地味な物語が好きというのもあるが、獣さながらの警戒心を露わにするシンシアに対し献身的に尽くし、本当に少しずつ距離を詰めて行く主人公の姿は描写も中々に丁寧で感動的であった
狼少女というユニークな設定もきちんと物語に生かされていて、シンシアが懐いた時の動物そのままのストレートな愛情表現は、非常に愛らしく保護欲を刺激されずにはいられない
また、シンシアを演じるまきいづみさんが本当にハマり役で、本作をまきいづみゲーと呼んでも過言ではない程だったりする
とはいえ、物語は基本的に重め
シンシアの治療をするに当たって、彼女の家族とも一緒に暮らす事になるのだが、実はシンシアの父は撃墜事件の際に死亡しており、その重い罪を背負い、罪悪感に絶えず襲われながら、自らが殺人者である事を隠してシンシアの家族と接する主人公の姿には思わず胸が苦しくなってしまった
まして、献身的にリハビリに取り組む主人公をシンシアの家族は実に温かく応援してくれるのだから罪悪感は尚更だ
それと余談だが、本作のOPムービーに登場する戦闘機がどう見てもF14トムキャットなのが、製作者の趣味が感じられて面白い
今時、戦闘機としてトムキャットをチョイスする辺り、ひょっとしてデンジャーゾーンを口ずさめる世代だったりするのだろうか