そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

雑記「エロゲーマーの俺が読む漫画 急」

気まぐれに始めたマンガ紹介も今回が最後となります
トリを飾るのはこの作品
・エロ魂!私説エロマンガ・エロ劇画激闘史/ダーティ松本
日陰の存在としてはエロゲよりも長い歴史を誇るエロ漫画の世界を描いた作品です
作者のダーティ松本氏は、その世界で古くから活躍されている方でもありまして、本作はそんな氏の半自伝的作品でもあります
まんが道、もしくは汚いバクマンとでも申しましょうか。そんな華々しさとは程遠い世界にドロドロとした情熱を燃やすエロ漫画家達の凄まじい生き様をこれでもかというぐらい力の入ったタッチで描いています
何というか魂がこもってるんですよ
題材にしてるのはエロ漫画家なのに作中の言葉の一つ一つが妙に胸に響くんです
特に好きなのがこのくだり
「漫画を描くのに一番必要なものは?」
という問い掛けが登場するんですが、皆さんは何だと思います?
俺みたいな青臭い若造は情熱だとか志だとか答えてしまいがちなんですが松本氏の答えはこうです
「それは…時間だ!働いて…稼いだその金で…漫画を描く『時間』を買う。明日食う金がない、というその日まで…ギリギリまで描いて…そしてまた描く時間を買う為の日雇い生活に…」
この「時間を買う」という感覚が凄まじいですね
明日食う金がない状況に自分を追い込む姿勢、この気概はまさにクリエイター魂でしょう
漫画を描く事への思い入れの強さが窺えます
他にも印象的な場面が多々ありまして
イラストの世界から漫画家へ転身したもののスランプに陥った先輩が、真っ赤に塗りつぶされた部屋で血を吐いて死んでいるのを見た松本氏が「これが…俺たちの進む道か…」と呟くところなんかは壮絶としか言いようがありません
それから、漫画家を諦めた仲間の話が登場するんですが、その理由が食っていけなくなったからではなく「何を描いたらいいのかわからなくなった」という辺りに、クリエイターとしての難しさも見えてきます
読者や編集も強大な相手なのかもしれませんが、クリエイターにとって最大の敵はやはり自分自身なのでしょうね
この仲間の事を描いたエピソードの最後に引用された岡林信康の歌の一節がまた胸に染みるんですよ
最後はそれを書いて終わります
「心は変わりやすいけど、本当はなにもかわっちゃいないのさ
まわりだけがぐるぐるまわるのさ
転がってゆけ、崩れてゆけ
堕ちるとこまで堕ちてゆけ
咲いた花が、ひとつになればよい」