そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「蒼色輪廻」

主人公・堂浦聡は鬱屈した日々を送る青年だった
自身の内にうねる「野望」「欲望」「コンプレックス」等のマイナスの感情をコントロールできずにいるのだ
そんな彼の前に1人の少女が現れる
奇妙なコスチュームを身にまとい、主人公の心の中を覗くことが出来る不思議な少女
インフィニティと名乗るその少女は自殺しようとしていた堂浦に「キミの死ぬところが見たいの」と笑う
彼女に出会ってから堂浦の生活は一変する――
終わりのない闇の先で、彼を待ち受けるものは一体何なのだろうか…
というわけで知る人ぞ知る怪作 蒼色輪廻
本作の見どころは大きく分けて二つ
一つは、多元世界、時間軸移動等のユニークなシステム
これはまさにADVといった装いを演出していて、ループを題材にしたシナリオと抜群の相性を見せてくれる
そして、もう一つが主人公のキャラクターだ
これがもう強烈の一言につきる
ダメ人間タイプの主人公の中でも最上級のダメさだ
そもそも主人公自身が自らを、こう評する
「ダメなのだ、奇跡的にダメなのだ。頭脳、容姿、財力、社会適応力、社交性、運勢、いずれを取ってもダメなのだ。
最早、人間である自信さえ失った僕はダメ人間も失格しようとしている。人間でなくなると、ダメ人間はただのダメになる」
ここまで卑屈で自虐的だとある意味清々しく感じてしまう
また、本作はあらすじに書いてあるように主人公が自殺を試みるところから物語が始まるのだが、その際に口にするのがこの台詞だ
「よし!決めた!僕は、童貞バンザイと叫びながら あのカップルにダイブして死ぬ!
きっと、自分以外には全く無関心で他人に冷たい安全ボケした現代人たちは、まさか頭上から童貞が降って来るなんて思わないだろう」
いかに彼のキャラが濃いか、は伝わっただろうか
エロゲの主人公というのはなんだかんだ言いつつも実はイケメンというパターンが少なくない中で本作の主人公、堂浦くんは実にブサメンらしい生き様を晒してくれる
「キミがセックスをするためには、犯罪を犯すか金を払うかしなければならないんだ! 現実を見るんだ、現実を!」
などとヒロインに言われるのは彼ぐらいのものだろう
さて、最後は彼が口にする作中屈指の名台詞で締めるとしよう
「恋愛は人を傷つけますが、オナニーは人を傷つけませんっ!
世界で最初の戦争は性交渉の相手を奪うために起きたのです。
みんながオナニーしている限り世界はずっと平和なのです」