雑記、コラム「エロゲ主人公になれたらって、考えたことないかなぁ」
現在はひとまず回復したのだが、久しぶりに風邪をひいてしまい、つい先日までどうにも調子の上がらない日々を送っていた。
咳をしてもひとり、と云ったのは昔の俳人だったと記憶しているが、
「あ、アンタみたいなバカの日本代表みたいなのが風邪をひくだなんて(ry」
とか嫌みを口にしながらも、なんだかんだで面倒見よく看病してくれるツンデレ幼なじみもいなければ、
「わわわっ、た、大変だよぉ〜。お兄ちゃんしっかり! 死んじゃやだぁー!」
とか大慌てであわわあわわしてくれるドジ妹もおらず、
「………………ぴとっ……」
とか口数少なめに、湿らしすぎてびちゃびちゃになったタオルをおでこに当ててくれるような無口不思議系クラスメイトも身近に存在しない、しがないアマチュアの作家見習いな僕は、件の俳人さながらに、ひとり部屋で安静にすることで体のなかに侵入してきたバイキンマンと静かな戦いを繰り広げていたのである。
まあ、エロゲの主人公じゃあるまいし、たかが風邪で、お見舞いイベントが発生する男子が世の中にどれだけいるんだよって話ではあるんだけどね。にゃはは(虚しい笑い)
『もし、自分がエロゲ主人公になれたら』
あの手の成人向けゲームをプレイしたことがある人で、一度もこれを考えたことがない人はいないと思う。
じゃあ、なぜエロゲ主人公になりたいのかと問われると、具体的な理由は人によってまちまちであっても、
「うらやましいから」
というのが、根底に存在する気持ちとしては皆に共通しているはずだ。
ならば、そこに少し切り込んでみよう。
Q:エロゲ主人公のどの辺がうらやましいのか。
非の打ち所のない完璧超人イケメンだから?
女の子にモテてお手軽簡単にエロイことができるから?
内家の拳でバチバチッとやっちゃうだけでサイボーグ武芸者をデストロイできちゃうから?
この問いについては、各々が各自に答えを導き出してもらいたい。
いったいどこで読んだのか失念してしまったのが情けないが、僕は以前、このような問いに対して妙に胸が切なくなる解答をしていたブログ記事と出会ったことがある。
記憶の片隅にあるその記事では、上の問いに対して、こう答えていた。
「黙ってても周囲から気にかけてもらえるところがうらやましい」
これはきっと、日常系萌えゲーの主人公をイメージしての答えだろう。
周囲から気にかけてもらえる。
あまりになんでもないことだ。
だけど、ふと客観的に考えてみると、これがいかに選ばれた者しか享受できないのかがいやがおうでもわかってくる。
たとえば、朝あなたが会社や学校で言葉も発さず不機嫌そうな顔をしていたとして、
「おい、どうしたんだよ」
と当たり前のように気づかって声をかけてくれる友人やクラスメイトがいるだろうか。
もしいたとしても、そういった人間がいて当たり前の環境にずっといられる保証はあるだろうか。
異性からモテる人は現実にもたしかに存在するが、そういう人の大半は、意識的か無意識かの差こそあれ、そうなるための行動をしているからでこそモテているのであって、まったく無条件の手放しで黙っていてもモテる人なんてのはそうそういるものではない。
ましてや、異性からだけでなくそもそも周囲すべてからモテて気にかけてもらえる人など、実はよほどの選ばれた人間だ。
何もしなくても、デフォルトで人からモテる。
これってエロゲ主人公ならではの、現実ではまずないスキルなんでしょうね。
僕自身は、かつてこの記事を書いたブログ主さんとは生き方や考え方が違うから、手放しで共感してあげることはできない。
エロゲ主人公へのうらやましさの奥にある切実さはわかるし、それを鼻で笑えるほど達観もできちゃいないのだけれど、残念なことに結局のところ周囲に何かを期待するには僕の心根はもうひねくれすぎてしまっている。
そして、そんなひねくれているはずの僕が、なんだかんだで捨てきれず胸に抱き続けている淡いものこそが、前述した問いに対しての、僕なりの答えでもある。
Q:エロゲ主人公のどの辺がうらやましいのか。
A:心の底から好きになれる相手と出会えるのがうらやましい。
我ながら、なんともロマンチストな解答だと思う。
まあ、創作なんてやってる人間がロマンチストじゃないわけないんだけどねっ。
さて、僕の解答には、好きの前に「心の底から」という前置きがついている。
「あなたにとって、人を好きになるってどういうこと?」
「うまく云えませんけど、自分よりも大切な人ができることだと思います」
こんなやりとりがあったのは、「僕と、僕らの夏」の作中だったろうか。
自分自身よりも大切だと思える相手との出会い。
プレイ作品傾向のかたよりもあってか、これまで僕がプレイしてきたエロゲ群には、そんなかけがえのない出会いが溢れていた。
運命に導かれたとしか解釈できない、惹かれあい惹かれあう情熱的な恋が。
欠けた心の隙間を埋めあう、恋と呼ぶには刹那的すぎる求め合いが。
馴れあうのではく、敬い互いに並び立ち、ときにはぶつかりつぶしあいさえする、それでいて愛としか形容しようのない濃密なコミュニケーションが。
僕は憧れる。羨ましいと思う。
自分自身をもっとも大事にするタイプの人間だからこそ、その価値観をねじ曲げ叩きつぶしてしまうような出会いを望んでしまうのだ。
一言で云うなら、つまりこういうことである。
「ひねくれものの俺が、好きで好きで命投げ捨てれちゃうぐらい惚れちゃうような女がいるなら現れてみろや」
だけど、それは有り得ないだろうと諦めてもいる。
だって、僕はエロゲの主人公じゃないのだから。
余談・ 最近寒くなってきたからか、飼ってる猫の食欲がやばいです。二時間おきぐらいにエサ食ってるんですけど、あいつ大丈夫なんですかね。