そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

雑記、回顧「2013年を振り返ってみて前編・読んで印象深かった漫画編」

 はっぴいにゅうにゃあ〜2014。
 ということで、年も明けたことだし自分にとっての2013年をざっと振り返ってみようと思う。
 とりあえず、2013年に読んだもの観たものプレイしたものの中から、何かしら印象に残るところのあった作品をピックアップしていきます。
 当然ながら、フレッシュさ? 何それ? な最新情報とは縁がない我が道を行くラインナップになっておりますので、そこんところよろしく。
 
 

 2013・印象に残った漫画

・C1ランナー /楠みちはる
「ねえ、オジサン、クルマってそんなに面白いんすか?」

 僕が中学校のころから買い続けていた湾岸ミッドナイトの続編でもあり、完結編でもあります。
 湾岸ミッドナイトという漫画は、ひたすらストイックで肩肘張りまくっていた前期と、思索の深みにどんどん沈んでいった後期とで少々ノリが違うんですが、このC1ランナーは、そこら辺のバランスがちょうどいいんですよ。
 やりたいこと、好きなことははっきりしてるんだけど、その先って何が待ってんのかなー、とおぼろげな不安を抱いてしまったときに読みたい一作です。
 フィクションだとしても、主人公たちの世界観と世の中とが地続きなことをきちんと意識させられる世界観って親近感が湧きます。


・DRAGON QUEST -ダイの大冒険- /三条陸(原作)稲田浩司(作画)
 これぞ少年漫画! ドラクエ原作を代表する一作。
 
 十数年ぶりに読みました。
 この手の昔リアルタイムで読んでました系の作品って、意外ときっちり全編読んではいなくて、ところどころ読み逃してたりするんですよね。そういうのもあって再読。
 いや、たしかに面白い。
 それと、読み返して軽く驚いたのは、こんなに毎度毎度全力投球をしているような作品だとは思っていなかった。
 やたら窮地に陥る場面が多いし、やたら死闘となることも多い。
 だから、ある意味では疲れる漫画なんだけれど、それは云い換えれば熱いってことでもある。
 あと、キャラの立たせ方がすごくいいね。
 どうでもいいキャラがほとんどいないもん。よくワニのおっさんが噛ませキャラだとネタにされるけど、実際はそうでもない。
 ーティー戦闘をちゃんと意識していてドラクエらしさを忘れてないのもえらい。


ハイスコアガール / 押切蓮介
 90年代を舞台にしたゲーム大好き少年の青春ストーリー。
 
 つい最近、アニメ化が決まったみたいですね。
 こういうノスタルジーを駆り立てる系の作品って好きなんですよ。
 これは僕が単に、ハイスコアガールのメインターゲット層であるところの90年代育ちだからというだけではなく、過ぎ去ってしまった時代への憧憬が根底があるからだと自己分析してます。
 だから、別に70年代でも80年代でもいいんですよ。
 そういう懐かしむような気持ちに触れるのが好きなんだと思います。
 メインディッシュになっているゲームという題材もですが、味付けとなっている思春期ならではの甘酸っぱくてもどかしい恋愛模様もまたノスタルジックな味わいですし。


ドリフターズ /平野耕太
 そうだいいこと思いついた。歴史上の英雄を異世界に集めて戦わせよう。
 
 面白い面白いという評判があちこちから聞こえていたので読んでみたら本当に面白かった!
 こういう面白いそうなものを全部詰め込んじゃう闇鍋みたいな作品って大好き。
 歴史上の英雄を呼び出して戦わせるにしたって、普通はバランスのとれたマッチメイクを心がけるよ。
 だけど、そこら辺をハナから投げすててるのがこの作品の魅力。
 エースパイロットの菅野直とローマ軍のスピキオが顔を合せるとかマジカオス。
 知略担当と戦闘担当をちゃんと分けてるのも痒いところに手が届いてて○。


・ナポレオン獅子の時代 /長谷川哲也
 フランス革命。それは人々の理想が巻き起こした吹き荒れる熱い風。
 
 僕、基本的に歴史ものが好きなんですよ。
 それで、歴史ものの醍醐味を一番味わえるのって、世の中が揺れ動いた激動の時代だと思ってるんです。
 だから、2013年の大河ドラマでやってた八重の桜もかなり楽しんで観てました。
 この漫画の舞台は革命たけなわな18世紀末のフランスで、まさに世の中が揺れ動きまくってた時代です。
 みんなもう大マジなわけです。理想、野心、欲望、様々な情念がぶつかりあって反発しあってドロドロに混ざりあって溶けていく。そういうとびきりに濃い作品でした。
 ロベスピエールが最後に遺す言葉とか本当に印象深いですよ。
「革命は潰えた
 だが、一度動き始めた人々の歩みは止まらない
 支配と自由の戦いが続く限り 私は何度でも現われる
 いつかきっと、私たちがどんなに渇望しても手に入れられなかった自由と平等を、皆が当然のごとく生まれながらに持つ世界がくる
 そのとき彼らは私たちの苦しみを理解するだろうか
 私たちを社会の礎でなく、敵か味方もわからず殺し合った狂人と思うかもしれない
 金持ちが貧困を理解しないように
 それでも、私は後悔しない」


虹色のトロツキー /安彦良和
 第二次大戦前夜、蜃気楼の国家・満州国で青年は虹を追う。
 
 何の気なしに読みはじめたら、これが面白いのなんの。
 満州国という、かつて大陸に存在した幻の国を舞台にした歴史ロマンです。
 キャラも背景も描写はしっかりしてるんですけど、どこか着地点が見えてこなくてふわふわ浮いてる感じの作品だったんですが、これ、きっと主人公も同じ心地なんですよね。
 虹っていうのは、いくら追いかけても永遠に追いつけないものじゃないですか。
 そうしてかけずり回っているうちに、時代の波が怒濤のごとく主人公たちを飲み込んでいってしまう。
 その辺がもう圧巻で、ストーリー以上の迫力がありました。


最強伝説黒沢 /福本
 闘わなきゃ……尊厳のために!
 
 これもダイの大冒険と同じで読み返した系です。
 立ち読みで目を通してたころは、「アジフライwwww」「休めww休めwwwww」みたいに、真面目に読んではいなかったんですが、改めて読んでみるとひとつひとつの言葉がやけに突き刺さってしかたがありませんでした。
 主人公の黒沢が闘っている相手はいったいなんなのか。
 これについて考えてみたとき、この作品を見る目は一変します。
 胸を張ることの大切さ。
 こんな時代だからこそ読みたい作品です。
 
 
・宮本から君へ
・キーチ!!
・キーチVS
ザ・ワールド・イズ・マイン
・Sugar
・RIN / 新井英樹

 もはや語り出すとキリがないですから簡潔に。
 新井英樹すごい。とてもすごい。
 特にキーチVSなんか、読んでて体が震えてしまった。たかが漫画なのに読んでて立ち上がってしまった。
 そういうピュアな部分が自分にまだ残ってるとは思いもしなかった。
 やっぱさ、とんでもなく強大な何かと戦うからこそヒーローなんだよね。カッコイイのは勝ち姿じゃなく、ぶつかっていく姿勢なんだよね。
 力があるから戦ってみるんじゃなく、力がなくったって戦わなきゃいけないから戦う。
 ヒーローになる資格はみんなにある。
 まずは自分から頑張らないと。
 キーチVSの作中で小学生が云う台詞が耳に痛いです。
「カリスマ、ヒーロー、リーダーは、希望や期待を抱かせますが、人を怠けさせます。人から考えるという義務と責任を奪います。大人になっても、義務も責任も負わない人たちが、できるだけ楽に今の損得だけで造っているのが世の中、現実ですよね」
 あと、表紙のインパクトもすげえ

ニニンがシノブ伝
・忠犬ディディー
・ゲノム
・新ゲノム/ 古賀亮一

 あ、この作者天才だ。この作者天才だ。
 こうもどえらいハイテンションギャグをよくもまあポンポン描けるな、と心の底から感服しましたとも。
 おそらくは気分が高揚して頭もキンキンに冴えて神が降りてくる違法薬物を摂取してるに違いない。 何ッ!? 原材料は美女の浸かった湯船の残り湯だと!? 本当なのかおいそれを俺にもよこせ! よこせ! せめて一口分ぐらいはスプーンにすくって舐めらせろ! おおどれどれ、うわなんだこれ舌がピリピリって、それ味の素じゃねえか! ふざけんな! もういい俺は部屋に帰って寝る! グヘヘ、高貴な家に生まれたプライドの高い女騎士を学園のフェンシングの試合で完全に負かし、愕然としているところに俺様が颯爽と手を差しのべて「貴様の勝ちだ……好きにしろ……」とか瞳をそらしがちに云わせちゃう夢をみてやるぞ!

   

・YOUR DOG /関谷あさみ
 彼も、彼女も、どうしようもなく乾いていたんだと思う――。
 
 田中ユタカさんにハマって以来、成年向けマンガも良さげなのがあったら、たまにチェックするようにしてたんですが、これは大当たり。
 繊細さ……いや、繊細に描こうという意思が作風にはっきり表れているのがとても好印象でした。
 心がどうしようもなく渇いて、いっそ傷つくなり汚れてしまうなりしてしまえばいいって、どこか投げやりな気持ちになるときってあるんですよ。
 実際は、刹那の衝動に任せたって何も変わんないんでしょうけど、そこにちょっと灰色なロマンスを挟んでみたのがこの作品でした。
 お互いに乾いていたからこそ物語が動き出す。そうやって、傷口がかさぶたを経て少しずつ治っていくようなお話です。


・女の子×女の子コレクション /ロクロイチ
 
 2chのなんかのスレに張られていた画像に惹かれて読んでみました。
 これも成年コミックで、さらには百合です。
 今時の二次元イラストとはまったく別タイプの線の細い絵柄も印象的だったんですが、それ以上に好感触だったのがキャラクターの所作から滲み出るかわいらしさでした。
 心情の起伏、表情の変化、ちょっとした仕草。
 露骨に媚びた感じのするかわいいではなく、ひとつひとつの所作が積み重なった上でじんわりと伝わってくる女の子ならではのかわいらしさ。
 こういうのを丁寧と云うのでしょう。


・俺はまだ本気を出していないだけ /青野春秋
 「見つけちゃったよね。俺の生き方っつーもんを」

 人類は衰退しました。のコミカライズが決まったときに、その記事の横で紹介されていたのがこの作品でした。
 けど、インパクトのあるタイトルが頭に残っていただけで、そのときは結局読まなかったんです。
 それから数年、映画化されたことをCMで知ったこともあり、読んでみたらこれがなかなかイイ。
 ダメ中年の主人公が思い立ったように夢を追いかけはじめるストーリーなんですが、闇の中を手探りで突き進んでいく中にも不思議と明るさや面白おかしさがあったりして、読み終えてみるとほんのり心が温まっている自分がいました。

 
 以上、今年読んだ漫画の中から、印象深かったものをピックアップしてみました。
 小説・ラノベ、映画、アニメ、エロゲ編に続く……