そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

コラム「まるちえんど」

小説、漫画、アニメ、そのどれにも不可能でありながら、エロゲ…というかゲームにのみ可能な事が一つある
それはマルチエンド
いや、終わり方に限らずそこにいたる過程も多岐に渡る事を考えれば、マルチシナリオと言った方が良いかもしれない
他の媒体では、二次創作や外伝に頼るしかないifの物語を正史として本編に組み込む事が可能なこのシステムは、物語の表現媒体としてのゲームの優れた点だと思う
先日レビューを書いたクラナドも、このシステムを非常に上手く使った作品であった
複数ライターである事を生かし、それぞれが違うタッチで同じテーマに取り組む事によって一つの作品の中で毛色の違う幾つもの物語を味わえるというのは、ゲームだけの特権だろう
他に、マルチエンドを上手く生かした作品として挙げたいのが、エロゲでありながらガチな戦争を描いた異色作である 群青の空を越えて
「もしもあの時ああだったら…」というifに対する想いが強い戦争という題材は、マルチエンドとの相性が抜群である
エンディングを分岐させる事により、一本道なシナリオでは、かなり際どいバッドエンドすれすれの終わり方を遠慮なく描く事が出来るのもこのシステムの強みだろう
また、行き着く先は大差なくとも、そこにいたる道筋によって物語は全然違う様相を見せるという事を教えてくれたのも本作あった
その他には、装甲悪鬼村正もマルチエンドの恩恵を受けた一作だと言える
善悪相殺という作品のテーマがあそこまで引き立ったのは、最終√に至るまでに、テーマに対してそれぞれ別アプローチから向き合った他√の存在があったからに他ならないと考えている
それから、二者択一が根底にある 君が望む永遠 などもこのシステムあってこその作品であろう
マルチエンドというシステムは、作り手に多大な労力を強いる物だろうが、ゲームにしか成し得ない大変素晴らしいシステムである
最近は、テキストにビジュアルとサウンドを加えたビジュアルノベルとしての側面ばかりが優れた点としてピックアップされがちであるが、いくつもの選択肢や物語を提供出来るADVとしての側面もまた優れた点としてピックアップしてもらいたい
というのも、名作と呼ばれる作品には、シナリオが一本道な物が非常に多いからである
ただ、むやみやたらと選択肢を増やしBADエンドを濫造するだけの物や、メイン√とのクオリティの落差が激しすぎる物は論外であるとは言っておきたい