連載コラム、雑記、思い出話「ぼくと、エロゲ 第六話〜50マイルズオーヴァー・2007春〜」
2007年春――
あえて選んでいたのか、それとも名作良作と呼ばれる作品を優先的に選んでいるうちにそうなっていたのか、気がついたら僕は泣きゲーにカテゴライズされる作品ばかりをたて続けてにプレイしていた。
(前も書きましたけど、エロゲ黄金期を追体験していけば泣きゲーと呼ばれるジャンルに勢いがあった時期を通過するのは必然なんですけどね)
しかし、いくら名作良作だからといって似たような系統の作品ばかりプレイしていたら食傷気味になるのも当然である。
そのせいもあってか、レビューサイトや2chで圧倒的名作と名高い“家族計画”をついにプレイしたのに、僕はそこまで感動できなくなっていた。
貶すわけではないが、プレイ前の期待値の高さとプレイ後の満足度の落差がもっとも大きかった作品は何か? と問われたら、僕はこの家族計画を挙げると思う。←黙れザザ虫。
(とはいえ、今プレイしなおしたら、言い回しの妙やら奥深い台詞のひとつひとつに唸らされること間違いなしでしょうけど。今もそう大したことはありませんが、当時の僕は輪をかけて読解力が貧弱でしたので。エロゲーマーとしての経験値も、山田一? 田中ロミオ? それ誰ですか? というレベルでしたし)
そんな中、泣きゲーに食傷気味になってきていることに自分でも気づかず、買い貯めたエロゲを駆り立てられるように消化しつづけていた僕は、とある作品との出会いによって泣くとか鬱になるのとはまた別種の感動を知ることになる。
“ロケットの夏”
云うのもなんだが、この作品以上にガツンと心に響いた作品はたくさんあるし、好きな作品の上位に問答無用で食い込んでくるというわけでもない。
だが、往々にして物事には出会うにふさわしいタイミングというのがあるのだ。
やたら涙を誘う展開に胃もたれをおこしてたところに出会ったこの作品は、僕の心に 爽やかな新風を運び込んだ。
エロゲのくせに爽やかなどというのもおかしな話だが、実際に爽やかだったのだから仕方ない。
だってさぁ、一度は夢敗れた主人公が、仲間のため自分のために再起して宇宙を目指すんだぜ。
この空をどこまでいけば宇宙に辿り着けるか知ってるかい? 高度50マイルさ!
もうね、空の果てまで続くロマンがぎっしり詰まってるわけですよ。
チャレンジャー精神って素晴らしいよね、見返りじゃないよね、っていう。
(厳密にはルートによってテーマが違ってたりもするのだけど、僕にとってこの作品のイメージは、やっぱり挑戦者たちによる爽やかな物語なのだ)
映画のライトスタッフとか、アニメだとオネアミスの翼とか、あの辺が好きなロケット野郎は今すぐにやれ。今すぐだ。
思うが、エロゲに限らず泣けるだとか燃えるだとか、そういうタイプの作品は、一言でイメージが伝わるから面白さを喧伝しやすい。
だから、名作良作と呼ばれる作品にはこの二つのどちらか、あるいは両方にあてはまる作品がとても多い。
そう考えると、ロケットの作品ははっきりとどちらかに当てはまるわけではなかった。そういう要素がないこともないが、一点推しするほどのわかりやすさはない。爽やかというのも結局は僕の主観だ。
なので、情報収集に勤しんでいるときも特別目に留まったとか、期待を寄せていたとか、そんなことはなかった。
だけど、ロケットの夏は紛れもなく良い作品だった。
出会えて良かったと思えるぐらいには。
泣くとか燃えるとか、そういうわかりやすすぎる枠にばかり捕らわれてると、思いがけない名作良作を見逃すこともあるよ、と僕に教えてくれたのがこの作品だったのだ。
※ロケットの夏のシナリオライターさん(focaさん)って、今何してんのかなぁと思ったら、なんと現在ニトロプラスにいるんですもんね。
名義は変わってますけど、ギルティクラウンのノベライズとか進撃の巨人のビジュアルノベルとか、そういうのを担当しているみたいです。
絵師さんのほうはもっと有名になっちゃいましたけど。