連載コラム、雑記、思い出話「ぼくと、エロゲ 第13話〜笑顔でメリークリスマス・2007末〜」
まだ10月ですので話題にするには少々気が早いですが、クリスマスというのはエロゲにおいても何かと重要なイベントだったりします。
冬が舞台のエロゲ=クリスマスが最大の山場と云い切っても過言ではありません。
次点でバレンタインっとこですか。
でね、エロゲーマーというのは、クリスマスになったらとりあえず起動しとこうと思い立つような作品を二つ三つ、心に決めているもんなんですよ。
僕だってそうですとも。
僕にとってのクリスマスエロゲと云えばこれです。
生きてる人いますか? とか、関東万歳だとか、刺殺絞殺撲殺斬殺圧殺完殺全殺、惨殺狂殺どれでも選べとか、シリアスなのばかり続けてやっていた時期、なんとなく間に挟んでみたのがこの作品でした。
エロゲ世間的にもそうですし、僕としても圧倒的高評価とは云いませんが、思い出深いという意味ではかなり上位にくる作品です。
まぁ、以前語ったロケットの夏と同じように、プレイしたタイミングが絶妙だったんですよ。
これねぇ、一言で云って、すごい癒される。
かいつまんで云っちゃうと、ケーキ屋の臨時店長がひょんなきっかけから夜になると猫になっちゃう魔法をかけられてしまうというだけのほのぼのストーリーなんですが、主人公含めて、出てくるキャラクターがみーんないいやつ。そしてあったかい。
ストレスフリーな作風なんですけれど、過度なマンセー展開がないから、何よりも鼻につくような嫌みがないんですよ。
あえてジャンル分けするならラブコメなんです。だけど、方向性としては日常系に近くて、ほんのりとしたイイハナシが軸なんです。
そう、イイハナシ。
勝手に名づけてるんですが、僕はその手の作品をイイハナシ系と分類しています。
パティシエなにゃんこと同時期にプレイしたサナララなんかもそこに含めてますね。
判断基準が主観によっているので明文化しづらいのですが、プレイしている最中やプレイ後にほんのりするかどうかがキーポイントになってます。
世界観が優しいこともさることながら、むやみやたらに感動を押しつけてこないことなんかもですか。
つまり、いろんな意味でふんわりソフトであると。
それで振り返ってみれば、このイイハナシ系の作品ってのは、スプーン一杯分ぐらいはビターな要素を含んでいることが多いんです。
むしろ、だからこそふんわりした部分が際立ってるんじゃないでしょうか。
甘いお菓子を作るのにも、塩をひとつまみ入れるようにね。
今でもちゃんと覚えてるんですけど、この“パティシエなにゃんこ”も主人公が父親との確執を抱えていました。
同じ職人としての尊敬と、息子としての反抗心の入り交じった嫌悪というね。
まぁ、父と子というのは創作における普遍的なテーマですよ。
けれども、こういうビターな部分を物語の軸にしてむやみに感動を煽るようなことは一切しないんですよ。
そういう事実を、物語の中でただあるものとしてだけ描いている。
さすがに放置はせず、ささやかに救済はしますけれど、あくまでもメインではない。
こういった慎ましやかこそがイイハナシ系ならではだと思います。
世界の片隅でなんか起こってる感なんて云い換えてもいいかもしれません。
癒しとはよく云ったもので、承認欲求を手っ取り早く満たしてくれるハーレム展開を美女揃いのキャバクラだとするならば、こっちは老夫婦がやっているほっこりした雰囲気の居酒屋みたいなもんでしょうね。
(↓画像はその時期プレイした作品いくつか)
――っとまぁ、ほんのりイイハナシってイイヨネ。って話をしたばかりなんですが、そういうのとは真逆のベクトルにあるのかもしれない、すっごいディープでえっぐい話も僕は嫌いじゃないんですよ。
といいますか、嫌いじゃなどころか好きなんだなと、再確認させられるようなとんでもないクリエーターさんに最近出会ってしまいまして。
その人はねぇ、正真正銘の天才です。
いずれ語らせてもらいますけど、もう僕の想像力じゃ抱え込めないぐらい破格中の破格。
今さら感ありありなのは自覚しながらも、こういう凄まじい作品との出会いに感謝したくてしょうがない気分です。
イイハナシ系がゆったりリラックスした気分で寝床につけるなら、こちらはもう寝つけなくて寝不足になるタイプでしょうよ。
実際読みはじめたら止まらなくて数日寝不足になりましたとさ。