そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

連載コラム、思い出話「ぼくと、エロゲ 第21話〜from Akita」

「エロゲ専門店、あるらしいよ」
 後輩のYくんがそう云ったのは、2008年8月の真ん中ぐらいだった。なんでも、秋田市にエロゲだけを扱うゲームショップがあるとの情報を掴んだらしい。
 僕はうなずいた。
「ゆこう」
「ゆこう」
 そういうことになった。
 このYくんというのは、2006年に僕にひぐらしを貸してくれた彼であり、エロゲにハマる原因を作った張本人だ。
 それからもう一人、KくんというFate大好きっこの後輩も誘って、彼に車(CJ4AミラージュのRS。純正クロスミッション装備のスパルタンな競技ベース用グレード、当り前のように手動ウィンドウである!)を出してもらい、僕らエロゲ男子三人は真夏の日差しの下、一路エロゲ専門店へと向かったのだった。
 振り返って見れば、すでに2008年ごろにはオタク界隈からエロゲの存在感が徐々に薄れつつあったのだろう。それでも一般ユーザーからしてみればエロゲはまだホットな存在で、ネットの各所や2chで話題に上ることも多かった。
 たとえばそう、僕の住まいは東北の秋田である。紛れもない弩田舎である。そんな田んぼと山林に囲まれたナマハゲとハタハタと熊しか住んでないような土地にすら専門店があったのだから、あのころはたしかにエロゲが流行っていたと云っていいのではないだろうか。
 そうしてやってきた地元のエロゲ専門店は、学校の教室を少し広くしたぐらいの規模だった。ゲームショップとしては平均的な広さ。しかし、棚に並ぶのはすべてエロゲなのだ。壁に貼られたポスターもすべてエロゲだ。エロゲーマーにとってなんとも居心地のいい光景がそこには広がっていた。
 特別に品揃えが良かったわけではない。しかし、エロゲ専門店なるものがこんな田舎にも存在している事実が、エロゲというジャンルの賑わいを現実の肌触りでもって伝えてくれる感じがして、僕の気持ちを嬉しくさせていた。
 僕がそれまで感じてきたエロゲというジャンルの賑わいは、すべてネット回線越しにしか感じたことのないどこか遠い国のお祭りだったから。
 このとき僕は、無料サービスのポスターをもらっただけで、結局何も買わずじまいだった記憶がある。きっと、すでに積みゲーが相当数に上っていたからだろう。(この時期に購入して2014年現在まだ積んでる作品もかなりある……)

(そのときもらってきたマスクドシャンハイのポスターはまだ部屋に貼ってるよ!)

 いかんせん自宅から距離があったので、僕がこのお店に訪れる機会は多くなかった。後々聞いた話によると、2010年ごろにはお店を閉めてしまったらしい。そしてそのころには、エロゲはすでにオタクたちの話題の最前線からすっかり遠のいていた。
 そういえば、2008年ごろの思い出で、エロゲと地元にちなんだ印象に残っている出来事がある。

 かがり火美少女イラストコンテスト、そして秋田県羽後町の名を挙げれば、2008年時点でオタク趣味を患っていた人ならば何かしらピンとくるのではないだろうか。
 簡単に説明すると、羽後町という秋田県の県南部に位置するさほど大きくない街があり、まず前年の2007年に第一回のかがり火美少女イラストコンテストが開催された。
 これは羽後町名物の盆踊りにちなんだ美少女イラストを全国から募集して、お祭りの一環としてコンテストを開催しようという試みだ。
 こういう萌え町おこし的な催しは今ではすっかり全国各地で見慣れてしまったが、鷲宮が話題になるかならないかぐらいの時期だった2007年当時としてはかなり珍しく、ちょこっとではあったがオタク系のニュースサイトに取り挙げられ2chの萌えニュース板にもスレが立った。
 なお、第一回のゲストは前町長と個人的に縁があった山本和枝女史だった。
http://shouichiro.exblog.jp/d2007-06-21

 もうのっけからエロゲ絵師である。
 そして、ささやかだった第一回が好評を呼んだことにより勢いがついた主催者側が、いよいよ萌え町おこしに本腰を入れてきたのが2008年に開催された第二回かがり火美少女イラストコンテストだった。
 当時、エロゲを代表する人気絵師の一人だった西又葵女史をゲストに呼んだ効果もあり、これはオタク系ニュースサイトや2chで大々的に取り挙げられた。地上波でも特集された。
※当時のスレ、そして映像資料。

http://news24.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1205176950/

 そのときの目玉だったのが、名産品や名所にちなんだイラストが描かれたスティックポスターだ。



 

 慧眼の士である諸兄らなら一目でおわかりだろうが、参加イラストレーターの半数近くがエロゲ原画の経験者である。
 仮にいま、オタクにアピールできる人気イラストレーターを集めたとして、エロゲに関わりのある人がこれほど集まりはしないだろう。ラノベだとかソーシャルゲームだとか、もっと一般層に向けたイラストの仕事をしている人が中心になるはずだ。

 あくまでも田舎で催されたイベントの一場面を切り取っただけではあるが、それでも僕は、オタクたちの注目がエロゲに集まっていた時代はたしかにあったのだと思いたい。
 もっとも、印象に残ってると云ったくせして、僕自身は羽後町のイベントに行ってなかったりするんだな。たはは。
 でも代わりにYくんやKくんが現地に行ってきてくれて、そのときに彼らからもらったスティックポスターはまだ手元にあります。
 ちなみに、じゃんけん大会を勝ち抜いたYくんは、西又葵直筆のサイン色紙を見事ゲットしましたとさ。


 
 西又葵さんが袋にイラストを描いたあきたこまちは有名ですけど、珈琲貴族さんがイラストを描いたものまであったのはこのブログを書く際に調べてみてはじめて知りました。


 僕のエロゲ熱が高まったあげく、ニコニコ動画に自作のエロゲ動画を投稿したのも2008年夏のことです。
 自宅で使ってたPen4のPCでせこせこ編集し、仕事が終わってから会社のPCでこっそりと投稿しました。当時としても雑な素人感あふれる動画だったと思います。(苦笑)
 

 ニコニコに投稿されているエロゲ関連の動画でも、特に再生数の多いものは07年、08年に集中しているように見受けられます。
 これもまた一面的なデータでしかないものの、このころはまだエロゲが注目されていた時代だったんですよ。