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そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「僕と、僕らの夏」

ダムに沈む村。最後の夏休み
現実だったのかすら解らない、微かな記憶
埋めたはずの宝物
叶えられても、続かないかもしれない
それでも今、抑えられないこの気持ち
心の中にあった淡い思い出、素朴な故郷の喪失
失っても、歩きつづけなければならないこと…
それは、少年少女の純朴性からの脱却でもある
そしてそれは心の中に残る永遠の宝物…
『僕たちは、本当の恋を、まだ、誰も知らない』
というわけで、カタハネ原画家である笛さんと群青の空を越えて早狩武志さんという個性的な組み合わせにより生み出されたのが本作 僕と、僕らの夏
ダムに潰える田舎町
そして、そこでの最後の夏
そんな儚い雰囲気を纏いながら綴られる物語はとても「普通」な物語
と言うか、あまりに普通過ぎて逆に際立ってる物語です
淡く切ない青春群像
若さ故の悩みや葛藤、そして喜びを見事に描ききったこの話は正に恋愛劇といった所でしょう
正直、プレイしてて面白いとか楽しいとか感じるタイプの作品ではありません
ですが、プレイ後に訪れる喪失感、カタルシスには何とも言えない切なさと清々さを感じずにいられませんでした
もし、大人への階段という物が存在するならば、その最期の一段を本作は書いてます
幼い頃まだ純粋だった自分が持っていた何かに対する郷愁
だが、それは失われていく物である
これは喪失の物語
ラブストーリーである以上、主役がいればヒロインもいる
これは主役にもヒロインにもなれなかった者達にも光を与えながら綴られる群像劇
主役以外のキャラ達にも、いろんな感情、価値感、そして物語までが同時に存在している事を思い知らされる構成は見事
これぞ群像劇と言った仕上がりです
どんな物語にもグッドエンドの裏には誰かのBADエンド、いや、TRUEエンドが存在するかもしれない
たが、そのエンドの結果得るのは悲しみだけでは無く、痛みを胸に新しい一歩を踏み出す力かもしれないのだというのを痛感させてくれる一本でした
後、樋口秀樹さんとWHITE-LIPSによる本作のBGMは神です
個人的にはちょっと尋常じゃない出来だと思ってます
地味ではあるけど、切ない感動と明日を生きる勇気を与えてくれる
そんな、等身大の青春物語が好きな人には、是非味わって欲しい本作
締めに作中のこの一文を書きます
「その時、はじめて知った。――何も言わないで、終わる。…それがふさわしい恋も、本当にあるのだと」