そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「塵骸魔京」

主人公・九門克綺は、他人との共感能力がないことに苦労しつつも、寛容な親友の峰雪やアパートの管理人・花輪の優しさに支えられて、平穏な学生生活を送っていた

そんな克綺の前に次々と現れる、謎めいたヒロインたち
初めはその不可思議な言動に翻弄されるだけだった彼は、やがて彼女たちの死闘の様を目のあたりにすることになる
彼女たちこそは人外の眷属――異界の文化と価値観を持つ、魔性の存在だったのだ
人外の者たちの対立に否応なく巻き込まれていく克綺
やがて彼は自らの数奇な運命と、それをめぐる陰謀の謎に迫っていく
というわけで 塵骸魔京
この作品のテーマは、異種族・異文化との交流
本作は一見すると、様々な陣営が入り乱れての異能バトルのような印象を受けますが、いざ蓋を開けてみると、異常な程に練り込まれた世界設定と深い物語に面食らいます
また、本作はニトロ作品としても屈指のシビアな世界観を持った作品
一言で表すなら、「生易しくないもののけ姫」とでも言いましょうか
互いが歩みよりさえすればきっと分かり合える
そんな優しさに溢れた幻想を本作は完全に否定している
互いが憎いわけではない
だが、どうしても、共存できない、相容れる事が出来ない者は確かに存在する
これは、そんな悲しい宿命を背負った者達が互いの生存を掛けた戦いを繰り広げる残酷で無慈悲な物語
人間とは別の種族、つまりは人外としての各キャラの理解できる部分だけでなく、理解し難い部分もことさらに強調して描かれていて容易に感情移入させてくれない意地悪な造りは本当にシビアで上手い
それでいて悪と言えるほどの明確な敵が登場せず勧善懲悪の枠に当てはまらないという点は同社の作品である装甲悪鬼村正で語られる善悪の理論に通ずる所がありますね
後、この作品は主人公がとてもユニー
エロゲで鈍感な主人公ってのは結構いますが
本作の主人公は、その中でも断トツで頂点に君臨すると思います
音楽に関してもZIZZが手掛けた異国情緒溢れるBGMや、いとうかなこさんが歌うOP曲が本作に非常にマッチしてて独特な雰囲気を盛り上げてくれます
それと最後になりますが、メシの描写が異常に上手いのもこの作品の特徴
読んでて本当に腹が減ってきましたw
そんなこんなで、燃えゲーとして息抜きにやるには少々重い本作
締めは作中で最も印象的であろうこの台詞で
「今日は、死ぬには良い日だ――」