そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「腐り姫〜euthanasia〜」

雨の降りつづく夏の日に、深紅の着物の少女に出逢った
『少女は、腐り落ちた果実の匂いがした――』
妹と父が怪死を遂げ、記憶喪失となった主人公・五樹は、義母に連れられ故郷の町へと戻る
そこで主人公は蔵女と呼ばれる、深紅の着物の少女と出逢う
少女は、妹に瓜二つだった
家族や友人は、身を案じながらどこか罪の意識を潜ませ、そんな彼らに蔵女は肉欲と狂気を与え崩壊させていく
記憶と現実の境界が揺らぎ、喪失感と蘇る恐怖との狭間での葛藤
これは赤い雪が降り積もるなか、世界が死の静寂に包まれるまでの4日間の物語
というわけで、今頃はせっせと型月で新作を書いている筈であろう、星空めてお氏の代表作 腐り姫
これはループ物の傑作の一つ
田舎を舞台に異常なまでの虚無的・退廃的な空気を纏いながら綴られる物語は本当に独特
この秀逸な雰囲気作りの上手さこそが、めてお節と言った所か
本作で表現されるテーマは2つ
一つは、近親姦へと至る狂気を纏った愛
そして、もう一つはサブタイトルであるeuthanasiaという言葉の意味する所である 安楽死
このどちらに惹かれたかによって本作を高評価する人の間でも感想が分かれます
俺が惹かれたのは後者
「人は幸せになる為に生きている」
そんな言葉は良く聞くが、ならば願いを叶え最大限の幸せに包まれたまま死ぬ事が出来たのなら、それは人生に置ける目的を達成したも同然なのでは無いだろうか
そんな事を、思わず考えてしまいました
安楽死
安らかに楽に死す
何という麻薬的で退廃的な言葉だろう
そこには恐怖も心配事も無い
あるのは安らぎと幸せ
この物語がループの果てに行き着くのはそれである
本作は一見、スタンダードな伝奇モノに感じるが
その物語のスケールは非常に大きい
もはやSFと言った方が良いかもしれません
それはタイムパラドックスを用いた考察モノとしての側面があるからでもあるんですが…
それにしても、この星空めてお というライターの個性は独特である
本作のようにインモラルで哲学的な作品を書いておきながら
そういった物を一貫して書いているかというと全くそんな事はない
驚く程に作品の一貫性が無く
そこにあるのは、めてお時空とでも言うような独特の雰囲気のみである
その割にテキストは案外読みやすいのは不思議
まぁ、雰囲気作りが上手いのも一貫性が無いのもライアーソフトというメーカー自体の特徴なんですがね