そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

コラム「決断」

「アンタ、一度だって自分で決めた事があるのかい?」
先日、再プレイしたとあるエロゲで主人公が言われた一言である
この主人公、若干優柔不断な所こそあるものの、そこまでウジウジした性格というわけではない
では、なぜ冒頭の様な辛辣な言葉を投げかけられたのかと言うと、自分一人で考え決断しなければならない事に対して他者に意見を仰ごうとしたからである
他者に意見を仰ぐという行為は、自分の行動に自分以外の誰かの意思を介入させる事でもあり、最終的には自分で決断したのであっても、そこに至るまでに他者の意見を多く取り入れたのでは、真に自分で考え決断したとは言えない
だが、自分の考えだけを頼りに生きるのは意外と難しい
特に俺のような決断力に欠ける人間は、エロゲ1つ買うにしても他人の評価や世間の評判を気にしてしまうし、もっと重要な局面になれば尚更周りに意見や同意を求めようとしてしまう
それは見方を変えれば賢い生き方なのだろうが、どうにも自分で決めている感覚が希薄になってしまうのも事実だ
そういえば「重要な決断を人に委ねてしまうと、結果の良し悪しに関わらず悔いが残る」
そんな内容の事を確かマブラヴか何かでも言っていた
さて、ここで一人の力士の話をしよう
その力士は、長年それなりの地位にこそいるものの、もはや上を狙うには年齢的にも実力的にも厳しく、後はどう考えても番付を下るだけであり
端からは、いつまでもダラダラと地位にしがみついて若手の躍進を阻むだけの老害にしか見えなかった
しかし、偶然彼のインタビューを目にして俺の認識は180度変わる事になる
彼は、自身が相撲を辞めない理由についてこう語った
「自分は、昔から体が大きく運動神経も良かった事もあり、周りに言われるまま相撲を始め、角界に入るのさえ周囲の意向で勝手に決められていた
このまま周りの意見に従って辞めたのでは全て人任せになってしまう
だから、辞める時だけは自分で決めたいんです」
それは、人に判断を委ねてきた男の意地
事が悪い方向に行けば人に判断を委ねたのを悔いる事が出来る
だが、事がなまじ良い方向に行ってしまうと素直に悔いる事も出来ない
それでも、どうしようもなくモヤモヤした気持ちは残る
悔いが残らない人生など存在しない
だが、納得の行く人生なら実現可能かもしれない
そして、それを実現する上で大切な事の一つが自分で考え自分で決める事なのだろう