そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

連載コラム、雑記、思い出話「ぼくと、エロゲ 第14話〜怒りの日来たれり・2007末〜」

2007年の終わりごろ、本格的に街が白く染まりはじめた季節だったと思う。
 思いがけない偶然がトントン拍子に重なって、僕は少しだけネットのできる環境を手に入れることに成功した。
 ちなみに自宅ではありません。
 冬ともなれば雪が二メートル近く積もるのが当たり前の過疎地にあるマイハウスに光通信が開通したのは、2011年の春のことですので。
 ちなみにネカフェでもありません。
 それはもうちょっとあとになってから利用するようになります。
 じゃあ、いったいどこなのかというと会社ですよ会社。
 勤め先のPCがネットに繋がってて、エロゲメーカーのHPを閲覧しほうだいなことに気づいちゃったんですよ。
 いやね、当初はそこまでネット環境を欲していなかったんですがね。そのころプレイしていたあやかしびとのCPU使用率が高すぎてペンティアム4がアッチッチッアッチッチッでどうしようもなくなりまして。(熱暴走で強制終了しやがりますです)
 それで調べてみたら、なんでもメーカーのほうからCPU使用率を下げるパッチが出てるらしいじゃないですか。
 これはどうにか手に入れなければ、と頭を悩ませていた矢先に、ふと目に入ったのが会社のPCだったわけです。
もう、これを有効活用しない手はないということで、修正パッチから体験版からデモムービーまで、夢中になってダウンロードしまくりましたとも。
 休みの前の日ともなれば、20GBのポータブルHDDを会社に持ち込んで、夜遅くまでこっそり居残りですよ。
 あのころって、まだYouTubeが流行りだしたばかりで、エロゲのデモムービーに限らずアップされてる動画はどれも画質が荒かったので、メーカーのHPからMPGファイルをダウンロードするのがまだまだ主流でした。
 たしか、最初にダウンロードしたデモムービーは、『遥かに仰ぎ麗しの』だった気がします。

 で、そうやって色々ダウンロードした中で、僕の心を特に引きつけていたのがこの作品。

『Dies irae −Also sprach Zarathustra』

http://www.youtube.com/watch?v=DR-kIluYxG4

 少し前に買った
『R.U.R.U.R 〜ル・ル・ル・ル〜このこのために、せめてきれいな星空を 』

 におまけで付いてきた体験版はべらぼうに熱かったし、デモムービーも榊原ゆいにゃんの主題歌も文句なしにかっこいいしで、期待感はもうMAXでした。
 デモンベイン、AYAKASHI、あやかしびと、と燃えゲーを続けてプレイしていたのもあって、そちらに気持ちがスイッチしてたんでしょうね。
 ただ、他に積んでた作品が多かったのもあって、予約まではしませんでした。
 何かを察知して慎重になっていたわけではないく、よその人の評価がちらほら聞こえてきてから買おうかなーとただ普通に考えていたんです。
 そしたら、ね。
 わかる人にはもうおわかりでしょうけど、あの事件が起こってしまうんです。

 
 怒 り の 日 来 た れ り!

 詳しくは以下のコピペ参照

『怒りの日事件

シナリオライター正田崇を語る上で欠かせない出来事であり、エロゲー業界の中でも有数の不祥事である。
単純に 「怒りの日」 や 、似たような不祥事を起こした作品cuffs・Gardenとセットで「怒りの庭」 などと言う場合もある。

発端はいわゆる「2007年版Dies irae」、「Dies irae~Also sprach Zarathustra~」である。
前作PARADISE LOST、先行公開された体験版の高評価、原画家Gユウスケの参戦もあって、少なからずの期待を受けて発表、延期を度重ねて発売されたのが本作。しかし、本当の問題は実際に発売されてから発生した。
まず、発売前には攻略ヒロインとして綾瀬香純、櫻井螢、マリィ、氷室玲愛の4人分のルートが挙げられていたのだが、この時実際に攻略できたのは香純とマリィの2ルート分だけだった。ルート削除に関しては、特に玲愛のファンが当時から多かった(実際は玲愛と螢のファンが大半だったと思われる)ために意気消沈したユーザーが多かったという。
上記のシナリオ削除に伴い、HDD容量が誤記として扱われ、発売日前日にHPでスペックの容量をその2分の1に予告なしで変更し、発売前に宣伝で使われていたCGやシーンは実際のゲーム中では使われなかった。
本作は体験版が高評価だったこともあり期待が寄せられたのも大きいな要因なのだが、その体験版以降のシナリオレベルが劣化し、発売前は正田崇オンリーという発表だったはずがスタッフロールで実は7名による複数ライターでの制作だったことが判明する。
このように、2007年版は多くの期待を寄せられていたはずが、その期待を招いた多くの情報を偽り、予定スペックの変更を発売日前後まで隠していた。
もちろん某掲示板の該当スレは大荒れとなった。
所謂未完成商法の代表例である。……と言うか、本事件以降エロゲー業界において未完成商法が目に見えて頻発するようになった事から、ぶっちゃけてしまえば未完成商法の大元である。その為、現在でもDies iraeや正田崇、lightに対して悪印象を抱いているユーザーも少なくない。 』

 当時のテンプレコピペ
『・・・その頃、light軍の陣地は重苦しい空気に包まれていた。
司令官服部は目の前のPCの画面を苦虫を噛み潰したような顔でじっと見ている。
「・・・どうやら・・・」服部が口を開く。
周りでそしらぬ顔でオペレートに熱中する・・・ふりをしていた兵隊達の背中がこわばる。
「この分では年末海峡に展開している流通軍と銀行軍の追求をかわせない状況かな・・、と」
兵隊達は聞きたくない。しかし、聞きたくないのに、耳が服部の発言を追い掛けてしまう。
「これ以上戦線が崩れるようではうちは敗北してしまう」
服部はもっとはっきり聞こえるように、声を大きくした。
耳をふさぎたい兵隊達。だが、反応して聞こえてますとアピールしたくないのでますます操作に熱中する。
「敗北するとどうなるか。それはサプライが供給出来なくなるということだな」
ひぃぃぃぃぃ・・・・。この場合のサプライとはそのまんまである。
「困るな、それは」服部は立ち上がり、兵隊達の間を歩き回る。
「で・・・、だ。艤装はそこそこ終わったんだろう?新造戦艦Dies Iraeは?」
兵隊の一人がおそるおそる声を上げる。
「いえ、その・・・、まだ、兵装がちょっと・・・、一番砲の『先輩』と三番砲の『蛍』がまだ・・・」
「間に合わせたまえ」服部はあっさりと言った。
「でも、まだ、設計主任の正田さんが・・・、まだ仕事が終わっていない、と・・・」
「彼は仕事はもう終わりそうだと半年も前に言った」服部は続けた。「すぐにも出せ。」
「でも、それではバランスが・・・」必死に言いつのる兵隊。
「兵は拙速を尊ぶ、こういう言葉は知らないかな、君は?」
「いや、でも、それでは、Diesに搭乗するヲタ達が納得するかどうか」
「彼らは納得するさ。何しろ待ち望んでいたのだからな。二番砲の『マリィ』も四番砲の『香澄』もあるし。」
「でも・・・。」テストも済んでないし、突貫工事で特に四番砲は・・・と、言おうとした言葉を引っ込める。
服部の額にも汗がにじんでいるのを認めたからだった。この戦いは負ける・・・。』


 と上記のような出来事がありまして、エロゲ界にはスワスチカなる用語が誕生したのでした。

『スワスチカ

元ネタはDies irae~Also sprach Zarathustra~。同作品内では、大量の人間の魂を吸い発生する異常領域のことである。このことから、多くの勇者(という名のエロゲユーザー)の心を打ち砕いた呪われし地雷作品をこの名前で呼ぶことができた。

スワスチカ認定の基準としては、
体験版、広告、HPの作品紹介などの発売前広告の出来が良く、人気と話題と多数の予約者を集めた事。
ゲーム開始後から暫くはゲーム性、シナリオ共に好感度であること。
発売後、広告にて中心的位置づけにされていたヒロインのルートの削除、攻略キャラの削減が行われた事が判明する事。
地雷という事が判明した後も工作版などで話題を集める事。ユーザーバッチが作成されれば確実。
とされている。おおまかではあるが、未完成商法で売られた作品や攻略の際に致命的なバグがあるなど、物語を進めることが趣旨のゲームとして成り立っていないものに言われやすい。だいたい1年1本くらいのペースで今も生産され続けている。
 
 詳しくはこの辺参照
 http://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/22634.html



 エロゲって、どうもこういった危ない部分があるらしいというのを知識としては知ってましたが、まさか祭りをリアルタイムで目撃する機会が訪れるとは思っていませんでした。
 ユーザーの魂がスワスチカに捧げられる様をリアルタイムで目にすることになるとは!
 07年版Dies Iraeの値下がりの勢いといったら本当にすごかったですよ。
 具体的にいくらで買ったかは忘れてしまいましたが、発売から3ヶ月後ぐらいには三分の一以下で楽々買えたと記憶しています。
 加えて、そんなDies Iraeの後を追うかのように、似たような未完成作品が一年以内に続々リリースされたのですからエロゲ業界恐るべしですよ。(Gardenとかアイ惨とかね)
 そりゃ、スワスチカなんて揶揄もされますってば。
 

※余談
 僕が会社のPCでエロゲメーカーのHPを見てたのがバレたのか、はたまた別の誰かがエロサイトでも閲覧していたのか、この二年後ぐらいに会社の規則に、
『社用PCでいかがわしいサイトにアクセスするべからず』
 という一文が付け加えられ、併せてパスワードによるロックをかけられてしまい、僕はやむをえず隣町のネットカフェを利用するようになるのだった。
 

(画像は当時プレイしたエロゲから)