そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「ONE〜輝く季節へ〜」

冬。
普通の学生であった俺の中に、不意にもうひとつの世界が生まれる
それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋めてゆく
そのときになって初めて、気づいたこと
繰り返す日常の中にある変わりないもの
いつでもそこにある見慣れた風景
好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している
その絆を、そして大切な人を、初めて求めようとした瞬間だった
時は巡り、やがて季節は陽光に輝きだす
そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか…
というわけで ONE〜輝く季節へ〜
もし、エロゲの歴史書という物が存在するならば、それに大きく載る事は確実であろう本作には、今や、メジャーブランドの筆頭とも言える存在になったkeyと麻枝准の原点がある
だが、最近のライト層向けなkeyのイメージのままプレイすると、非常に前衛的で難解なシナリオに正直面食らうだろう
本作は今の基準から見ても相当尖っている
それもセカイ系、或いは電波と呼ばれても仕方ないレベルである。
そんな、不条理ファンタジーとも呼ばれる奇抜な設定が際だつ本作は、きっとプレイした人の数だけ答えが存在するのであろうと思えるくらい考察の余地に溢れている
というか、考察してナンボの作品
受け身なだけでは何もわかりません。
言うなれば、実に寓話的な作品と言えるだろう

時も人の流れも全てが停止した「えいえんのせかい」
そして、そこにいつか呼ばれるという事と、置いていく事になるであろう、今いる世界で築き上げた絆
それらをどう解釈するかで感想が本当に人それぞれなのがこの作品の面白い所の一つだ
ちなみに俺は、この作品をプレイして「幸せ」について考えさせられた
絶望の果てに行き着く悲しみの存在しない えいえんのせかい という虚無的な幸せのカタチ
他者との触れ合いや絆の上に成り立つ危ういながらも温かい幸せのカタチ
どちらを選ぶかはそれこそ人それぞれなのだろう。
と言ってみたものの、これはあくまで俺個人の考察
本作は答えが明記されていないが故に幾らでも解釈のしようがある
それをありがたがるファンがいる一方で、読み手に答えを丸投げした無責任な作品と批判する人がいるのも事実
だが、確実なのは、本作がエロゲの歴史上で何かしら重要な役割を果たしたのであろうという事だ